《読書メモ》「何を選ぶか」を自分で決める

『選ばない消費 AI時代の暮らしと価値観』という本を読みました。

戦後すぐは、選べない消費。高度経済成長から、選べる消費。そして今は、あえて選ばない消費。

タイトルを見たとき、最初は「選ばない消費」を批判する本なのだと思っていました。

最新テクノロジーの批判、懐古主義的な人間らしい営みや原点に立ち返ろう的な、よくあるパターンの内容なのかと。

でも実際に読んでみると、そうではありませんでした。

むしろ、選ばないことは今の時代に合った合理的な消費スタイルのひとつとして捉えられています。

たしかに今は、あまりにも選択肢が多くあります。

昔なら、お店に並んでいる実物の中から選べばよかったものが、今はインターネットでいくらでも比較できてしまう。

口コミもランキングもあるし、SNSにはおすすめが流れてくる。

YouTubeを開けば、次に見る動画をおすすめしてくれる。好みに合いそうなチャンネルをマッチングしてくれる。

買い物だって「これを買った人はこんな商品も買っています」と親切に教えてくれたりとします。

全部を自分で選ぼうとしたら、時間がいくらあっても足りない。

だから、人やAIに選んでもらう。そういう「選ばない消費」が増えているのが令和の今の状況であるという事実がまず述べられていました。

わたしはこの本を読むまで「選ばない=考えない」というイメージをどこかで持っていたように思います。

漫然とおすすめされたものを観たり聴いたり読んだりしているのって、かなり受け身で頭を動かして選んでいない=良くないことなのでは?と。

でも、この本を読むとそうとは限らないことが分かりました。

選択肢が多すぎるから、あえて選ばない。信頼できる人に任せる。おすすめされたものを試してみる。

そうすることで、自分の時間や労力を別のことに使うことができます。

これはむしろ、賢い選択ともいえると書かれていました。

だから、選ばない消費を減らせばいいというわけではない。

大切なのは、選ぶことを増やすか減らすかとか、量の問題ではないということ。

何を自分で選ぶのかを自分で決めることが重要、とのことです。

一番怖いのは「選ばされている」ことに気づかないこと。

怖いのは、自分で選んでいるつもりなのに、実は選ばされていることに気づいていないこと

「これが欲しい」と思ったものが、実はSNSで何度も目にしていたから欲しくなったのかもしれない。

「この映画を見たい」と思ったのも、本当に自分が興味を持ったからなのか、たまたまおすすめに何度も出てきたからなのか。

もちろん、それが悪いわけではありません。

おすすめされたものが自分にぴったりだった、ということもある。

問題なのは、誰かに選ばれたものを選んでいるのに、それを自分の意思だけで選んだと思い込んでしまうこと。

「これは人におすすめされたから選んだ」と自覚しているのなら、それも自分の選択になる。

でも、そのことに気づかないまま、「わたしはこれを選びたいと思った」と思っているとしたら、自分の選択と誰かの選択の境目がわからなくなってしまう。

だからこそ、「何を自分で選びたいんだろう?と、ときどき立ち止まる必要があるのだということが本書の後半の主題だったように思います。

「自分で選びたいこと」は何だろうと考えた時、わたしとしては料理、自炊が思い浮かびました。

料理は効率だけを考えれば、選ばない方法はいくらでもあります。

お店で買ってきたり外食することもありますが、家で用意する場合にも、おすすめされた献立をそのまま作るとか、AIに冷蔵庫にあるものて作れるレシピを考えてもらったりとか。

それでも全然良いのです。むしろ料理は選択する労力を極力省いて、他の部分で選ぶ力を残しておきたい人もいると思います。

わたしの場合は、次の日何を作るか決める時、頭の中でいろんなことを同時進行で考える必要があるので、効率を考えてもAIに頼るよりは自分で判断する方が早かったりします。

冷蔵庫を開けて、残っている野菜や肉類、魚類を確認。

昨日は何を食べたかを考えつつ、残り物を明日はこうアレンジしてみよう。子どもはこれで足りるから、夫用に豚肉使ってメインを作ろう。てことはスチーマーを使うから朝食の卵料理は茹で卵にしよう。

例えば同じメニューを作ったとしても、冷蔵庫の中身やその日の予定によって、少しずつ違うものになります。

自炊に関しては自分で選んでいる感覚がとても強い。ここは自分で選んでいる!というのがあると心地いいのかもしれません。

いつか読んだ本、くどうれいんさんの文章に「自炊は自分にとっての調律だ」というようなことが書かれていました。

その時に食べたいものを作って身体を調律すると同時に、自分で選択する心地よさを味わうことで心の調律にもなっているのかもしれません。

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これからは、AIやアルゴリズムによって、ますます「自分で選ばなくてもいい」ものが増えていくと思います。

本書でも書かれていたとおり、それは悪いことではありません。

人に任せていいことは任せる。おすすめに乗っかってみる。運に任せて楽しむ。

そういう「選ばない」も、生活をラクにしてくれます。

でも、だからこそ「これは自分で選びたい」と思うものを持っておくことが大切なのではないかと感じました。