最近よく「AIとの差別化」というテーマの発信を見聞きします。
わたし自身、chatGPTに頼ることも多くなってきました。もはやこれからはAIありきで生活していく時代になるからこそ、一方で“人間にしかできないこと”という議論も深まっているのだと思います。

「ポジショントーク」という言葉は、通常は「自分の立場を正当化するための発言」というややネガティブな文脈で使われますが、これをポジティブに捉えることでAIとの差別化ができるのではないかと感じています。
そう感じたきっかけは、夏頃に聴いたVoicyの配信でした。
雑誌「ESSE」のチャンネルにライターの佐藤友美さん(さとゆみさん)がゲストとして出演されていた回。うろ覚えなのですが、たしか文章を書くことについての話の中で、さとゆみさんが「ポジショントークで良いのでは」というようなことをお話されていました。
それを聴いて、本来の意味のポジショントークではなく、自分の今置かれている立場や経験があるからこそ話せる言葉があると言う意味で、ポジショントークをポジティブに再定義してみることで、「こんな自分の話やけど誰が興味あんねやろ」状態を打破できるのでは?と。(わたし自身がこの状態によく陥ります…)

例えば、同じ映画を観た感想を書くにしても、今の自分の立場(ポジション)によって人とは異なる文章になる。年代、職業、幼少期からの経験、結婚しているか独身か、子育て経験の有無、離婚経験の有無、最近読んだ本、これまで出会ってきた人々など、自分とまったく同じポジショニングな人はいないはずです。
毎日家事育児も、娘たちの送迎や近所のスーパーでの買い物でたまたま何かふと考える出来事があったとしても、「その場に自分がいた」という意味でのポジショントーク。自分だから話せることというのが、そこにはある気がしてきます。

自分の立場・経験・背景を抜きにしては語れないことこそが、人間が語る意味であり、その人にしか見えない景色でもある。
AIは「俯瞰して最適解を出す」ことは得意でも、「立場を持って語る」ことは苦手。AIには身体も経験もなく、どのポジションにも「居た」ことがないから。
でも人間は、例えば親になったからこそ見える視点、失敗したからこそ言える実感、特定の職業・環境・地域で生きてきたからこそわかることといった位置づけ(ポジション)を通して世界を見ることができます。
そう考えると、AI時代に磨くべきスキルが色々ある中で「書く」という領域でできることを一言で表すならば、再定義した「ポジショントーク」なのではないでしょうか。