「北風的」投資と「太陽的」投資

ほぼ毎日利用している音声配信サービスVoicyに、今月から広告が入るそうです。

広告を聴かずにこれまで通りの利用をするためには月額課金「Voicy+」に加入する必要があるとのこと。

このことに関して、感じたことを書いてみようと思います。

今回のVoicyはYouTubeとよく似ている仕組み。

YouTubeもVoicyも企業側(広告を出す側)は広告を聴いて見てもらうことで会社の認知度を上げたり、売り上げに繋げることにメリットを感じて、プラットフォーム側に投資をしている。

それを聴く側見る側としては、課金することで広告を飛ばし快適に視聴する、時間をお金で買うために、不快を取り除くことに投資をしている。

これが同時に同じサービス内で成り立っているのは、すごく面白い構造だなぁと思いました。

それぞれの目的、特に広告を見てほしい企業と見たくない視聴者は正反対のことに対して投資をしている。それでひとつの会社の経済が成り立っている。

現代のあらゆるサービス、特に配信系は北風的投資と太陽的投資で成り立っているのではないかと考えました。

突然ですが、有名な北風と太陽の話。

ある旅人のコートをどちらが脱がせられるか、北風と太陽の勝負します。

北風は強い風でコートを吹き飛ばそうとしますが、旅人は寒いのでより一層力を入れてコートの前を閉じることに。

太陽はポカポカ陽気で暖かくすることにより、旅人は自ら進んでコートを脱いだという話です。

この話では、太陽の勝利だったけれど、現代はどちらが正解という話ではないのかもしれません。

企業(広告主側)は相手(視聴者)に何らかのストレスや不利益を課し、それを排除するための課金を利益に繋げる北風的収益と、相手にとってプラスの快を与えることで利益に繋げる太陽的収益で成り立っている。

支払う側からすると、マイナスをゼロ状態に持っていくのが北風的投資、プラスの価値を生み出すことへの課金が太陽的投資になる。

でもここでVoicy+に関する放送を聞いて「?」と思ったこと。

Voicy側としてはVoicy+(広告スキップできる)に加入してほしいと放送内で強調されていました。

その一方で、放送の途中で流れる広告は「聴いていて嫌な気持ちにならない広告」「Voicyらしい広告を目指す」とお話しされていました。

広告スキップというサービスは北風的収益のイメージだけれど、広告を聴いていても、放送の途中で割り込んできても不快なものでない限りは、北風になりきれていないのでは。

つまりそこまでVoicy+に現段階で加入しないと不利益を被るという事態になりきれていないというか。

もちろんこれからVoicy+加入者だけが利用できる活用方法が出てくるので、北風だけではない太陽的な側面も盛り込まれてくるとは思いますが、現段階では広告スキップ機能のみ。

Voicy+に多くのリスナーを加入させたいのであれば、「広告=邪魔なモノ」と位置付ける必要があるように思います。

もちろんVoicyはユーザーを大切にしている会社なので、そこまでは…とこちら側目線(リスナー側)に立って考えてくださってことだと重々承知はしていますが。

わたし自身、今登録しているサブスクとして、YouTubeプレミアムとAmazonプライムがあります。

最近始まったAmazonプライム広告スキップには課金していません。

YouTubeは広告内容も遮られる頻度も不快だから課金する。

Amazon広告スキップ機能は、出てくる広告が嫌なものではない、すぐに終わるし回数も少ないので課金していない。

そう考えると、Voicy+に加入していないと聴ける放送に回数制限するとか、そこまでしてもいいような気がしてきました。

とはいえ、Voicyには他の配信サービスと違う強みがあります。

これまで9年間無料で良いコンテンツを配信してきたという信頼残高があるから、その蓄積からVoicy応援したいという人からのVoicy+への加入は一定あるのではないでしょうか。

「Voicy+に加入する」という結果は同じであっても、Voicyを応援したいリスナーからの課金は太陽的収益にあたります。

自分のサブスクや日頃の買い物も、北風的投資か太陽的投資かで考えてみると面白いかもしれません。